使われないまま消えるギフト券は、年間いくらになるのか

ギフト券 使い忘れ / 商品券 失効 / 退蔵益

結論から書きます。ギフト券で失われているお金のうち、金額がはっきり数字として表に出ているのは、「有効期限が切れて使えなくなったもの」ではなく、「有効期限が無いのに、持っていること自体を忘れられたもの」のほうです。期限切れは悔しいので記憶に残りますが、期限切れの側には公式の統計が無いため、金額の大小そのものを比べることはできません。

なぜそう言えるのかというと、期限の無い券は発行した会社の決算書に「売れたのに使われていない分」として残り続け、いずれ利益として計上されるからです。つまり、外から金額が見えます。この記事では、その数字を出典つきで並べたうえで、なぜ無期限のものほど忘れられるのかを整理します。

「退蔵益」という言葉

会計の言葉が1つだけ出てきますが、難しい話ではありません。退蔵益(たいぞうえき)とは、「売れたけれど、もう使われないだろう」と会社が見込んだ金額を、利益として計上したものです。商品券を1,000円で売った時点では、会社にとってそれは売上ではなく「あとで1,000円分の商品を渡す義務」、つまり借金のようなものとして扱われます。実際にお客さんが使ったときに、はじめて売上になります。ところが何年も使われないままの券が積み上がると、会社は「この分はもう使われる可能性が低い」と判断し、渡す義務が消えたものとして利益に振り替えます。これが退蔵益で、英語では breakage(ブレッケージ)と呼ばれます。

ここで大事な注意が1つあります。退蔵益は「失効した金額そのもの」ではなく、会社による見積りの数字です。「これだけの券が期限切れになりました」という集計ではありません。ですので以下の数字も、規模感をつかむための目安として読んでください。

公表されている数字を並べてみる

調査・開示の条件がそれぞれ違うため、横に並べても単純比較はできません。数値と一緒に、出典・時期・サンプルをそのまま載せます。

データ数値出典・時期・サンプル
ティーガイア カード退蔵益(QUOカード発行元の親会社) 41億8,600万円 同社有価証券報告書 2024年3月期の数値として、現代ビジネスが報じています
B-Rサーティワン アイスクリーム 販売済未使用ギフト券収入 3億383万円(経常利益の16.3%) 同社有価証券報告書 2023年12月期の数値として、現代ビジネスが報じています
米スターバックス breakage revenue 約2億1,500万ドル(直営店分196.1百万ドル+ライセンス店分18.9百万ドル) Form 10-K(FY2023、期末2023年10月1日)
ポイントの年間失効額(推計) 概算1,389億円相当/1人あたり平均2,747.4円 プレミア・クロスバリュー「クレジットカードポイントとマイルの利用状況に関する実態調査」2021年12月実施、全国18〜79歳1,236人
プレミアム付商品券の利用率 約99%(利用額2,200億円/購入額2,209億円) 内閣官房・内閣府「プレミアム付商品券事業の実績に関する報告書」令和2年12月(2019年の国事業)
デジタルギフトで使われるサービス LINEギフト43.3%/Amazonギフトカード37.4%/giftee 10.8% マイボイスコム「デジタルギフト(eギフト)」調査 2025年4月実施、9,063人回答・複数回答
米国のギフトカードで一度も使われない割合 約6% 米業界系メディア。定義に幅があり、州法や未請求財産法の制度も日本と異なるため参考値

1社のカード退蔵益が40億円台に届いている、というのが目を引くところです。QUOカード(カード型)は公式に有効期限が無く、少額の残高や、そもそも持っていること自体が忘れられやすい商品です。「期限が無いから安心」ではなく、「期限が無いからこそ残り続けている」という数字だと読めます。

なぜ使い忘れが起きるのか

忘れる理由は、だらしなさではなく、券のつくりのほうにあります。大きく4つに分けられます。

期限が短すぎても、長すぎても忘れる

これが両極になっているのが厄介なところです。期限が短い券は、「あとでゆっくり使おう」と思っている間に切れます。逆に無期限のものや、Amazonギフトカード(2017年4月24日以降の発行分)のように10年という長い券は、「いつでも使えるから」と引き出しにしまわれ、そのまま存在ごと忘れられます。忘れにくいのは、その中間だけです。

なお、LINEギフトなどのeギフトには利用期限が設定されていますが、日数は商品によって異なります。公式サイトでも、有効期限はマイページ内の「もらったギフト」から確認するよう案内されています。もらったら、その場で自分の券の期限を確認してください。

少額・端数は最後まで残る

紙の商品券では、支払額との差額が出ても釣り銭が受け取れないことが多く、端数の使い道に困ります。ポイントの数十円も同じです。「これだけのためにレジで出すのは気が引ける」と感じているうちに、少額の残高だけが手元に残り続けます。

実際、Digital Platformer の「デジタル商品券に関する実態調査」(2023年2月16〜17日、全国20〜60代の男女500人、インターネット調査)でも、紙の商品券のデメリットとして「持ち運ぶ際にかさばる」293人、「なくしてしまう恐れがある」268人、「端数の釣り銭が受け取れない」202人が上位に挙がっています。自由回答には「知らない間に有効期限が切れて使い物にならなかった」という声もありました。

「そろそろ切れます」と誰も教えてくれない

紙の券は当然として、デジタルのギフトも同じです。もらったメッセージはトーク画面の上に流れていき、期限が近づいても何も起きません。LINEギフトのeギフトでは、贈った側にも失効が通知されないとされており、「使われなかったこと」が誰の目にも触れないまま終わります。気づく仕組みが最初から入っていない、というのが構造的な弱点です。

使える店が限られている

優待券や地域の商品券は、使える店舗が決まっています。生活圏に対象店が無ければ、使う機会そのものが訪れません。前述の内閣府の報告書でも、プレミアム付商品券について、人口1万人未満の地域では25.5%が「使いたい店で使えなかった」と回答しています(全体では90.7%が「使いたいお店で使えた」と回答)。

例外もあります

すべての券が使い忘れられているわけではありません。自治体のプレミアム付商品券は、購入額2,209億円に対して利用額2,200億円、利用率およそ99%でした(内閣官房・内閣府の実績報告書)。自分でお金を払って買い、使える期間が数か月に区切られているという設計だからです。無償でもらい、期限が無く、いつでも使えるものとは性質がまったく違います。

裏を返せば、無期限の券にも「自分で期日を決める」仕組みを足してやれば、同じように使い切れるということでもあります。

まとめ

金額がはっきり数字として表に出ているのは、期限切れではなく無期限の券のほうでした(期限切れ側は公式の統計が無く、金額の大小そのものは比べられません)。会社の決算に退蔵益として現れる規模を見れば、それが特別に不注意な人だけの話ではないことが分かります。

対策はシンプルです。無期限の券も含めて、持っているものを1か所に書き出すこと。そして期限が無いものにこそ、自分で「見直す日」を決めておくことです。期限のある券は放っておいても期限が迫ってきますが、無期限の券は誰も急かしてくれません。

期限番は、期限の無い券も登録できます。
QUOカードのように有効期限が無いもの(百貨店の商品券なども期限の定めが無いとされています)も「無期限」として登録しておけば、1か月・3か月・6か月・1年から選んだ間隔で「まだお持ちですか」と定期的にお知らせします。期限のあるものは30日前・7日前・前日にメールが届きます。会員登録はメールアドレスだけ、無料です。期限番を使ってみる

関連する読みもの: ギフト券の有効期限が「6か月」のものが多い理由 / 商品券・ギフトカードの有効期限一覧

本記事は執筆時点(2026年9月)の各社公表資料にもとづきます。退蔵益・breakage は失効額そのものではなく会計上の見積りであり、各調査は定義・時期・サンプルが異なるため単純比較はできません。個々の券の有効期限や条件は、必ず券面および発行元の公式案内をご確認ください。

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